当協会会長からのごあいさつ
会長 大胡田 誠
品川区視覚障害者福祉協会は、区内在住の視覚障害者が中心となって構成する団体です。少し長い名前なので、私たちは、略して「視障協」と呼んでいます。
視障協では、品川区に住む視覚障害者のよりどころになることを目標に様々な活動を行っています。その活動の一部をご紹介したいと思います。
視覚障害があると、周囲に障害を理解してもらえずに孤独になってしまうこともあります。視障協は、まずは、仲間と障害を気にすることなく悩みや愚痴を言いあったり冗談を言って笑いあったりする場でありたいと考えています。茶話会や音楽会、軽いお酒を飲みながらの懇親会、研修旅行、各種クラブ活動など、同じ障害を持つ仲間同士だからこその気楽で肩の凝らないイベントが目白押しです。
また、やはり視覚障害は情報の障害ですので、自分だけでは手に入らない福祉の制度や最新のスマホアプリなどについての、仲間同士での情報交換も重要です。視障協でも、定期的に、IT講習会などを企画しています。
加えて、私たちの生活をよくするためには、東京都や品川区の政策に私たちの声を反映してもらうことが大切です。区の会議に委員を派遣したり、定期的に区議会の各会派の議員さんたちと懇談させていただくなど、品川区に住む視覚障害者全体の生活の向上を目指した取り組みも行っています。
今年度、視障協が品川区や区議会の各会派に提出した要望のうち、重点的に要請しているのは以下の6項目です。
1 現在建設中の品川区役所新庁舎内にマッサージルームを設置し、あん摩師・針師・灸師の資格を有する視覚障害者をヘルスキーパーとして雇用してください。
2 品川区においても、通勤等の経済活動にガイドヘルパーが利用できる「重度障害者等就労支援特別事業」が開始されると伺っています。各相談支援事業所や同行援護事業所に対し、この制度を周知し、多くの視覚障害者がスムーズに利用できるよう徹底してください。
3 区が主体となり、急な発病、親類の不幸など、緊急時に対応してくれる当番医に類似したガイドヘルパーのネットワークを構築してください。
4 障害者向けアプリ等が充実してきた昨今、視覚障害者にとっても、スマートホンやタブレットは自立したゆたかな生活を営む上で必須のツールになりつつあります。一方で端末価格が高騰し、多くの視覚障害者にとってはこれらの端末の購入は困難な状況です。そこで、日常生活用具給付事業の対象に、アップル社のiPhone及びiPad、その他メーカーのアンドロイド端末を加えてください(鳥取県ではスマートホン及びタブレット端末が日常生活用具給付の対象となっており、また、都内では、すでに八王子市がタブレットを対象品目に指定しています)
5 スマートホンのカメラとGPS情報を用い、遠隔地から視覚障害者をサポートする株式会社プライムアシスタンスの「アイコサポート」というサービスがあります「https://eyecosupport.prime-as.co.jp/」必要な時にいつでも視覚サポートを受けられる、とても画期的で有効なサービスですが、料金が高額でほとんどの視覚障害者は利用できません(利用料金は月額5500円です)同サービスの利用料金の全部又は一部を援助する仕組みを作ってください(鳥取県では、行政の補助により、視覚障害者は同サービスを無償で利用できるようになっています。)。
6 独居の視覚障害者や、夫婦とも視覚障害を持つ世帯では、高齢になったのちの生活の維持が大きな課題となっています。このような視覚障害者が、専門的なサポートを受けつつ自立して生活できるよう、視覚障害者を対象とするグループホームを設置してください(例えば、神奈川県平塚市のグループホーム「ビリーフ」や、東京都日野市の「光の家障害者グループホーム」が参考になります)
ところで、村上春樹の小説にこんな一節があります。
「人の心と人の心は調和だけで結びついているのではない。それはむしろ傷と傷によって深く結びついているのだ。痛みと痛みによって、脆さと脆さによって繋がっているのだ。(『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』より)
人は傷があるからこそ繋がれる、痛みを知っているからこそ一つになれるのでしょう。
私たちも、先輩たちの積み重ねてきた伝統を引継ぎ、視障協が区内の視覚障害者のよりどころであり続けられるよう、明るくアットホームな会の雰囲気を大切にがんばっていきたいと思います。